ALL YOU NEED IS KILL

 エイリアン《敵対的な宇宙生物》の侵略を受けている近未来の地球を舞台に、敵が人類に勝つために引き起こしている時間のループに巻き込まれてしまった主人公が、出撃しては戦死する2日間を何度も繰り返すうちに経験を積んで強くなり、ループの原因となっている敵を倒す方法を見つけ出して勝利を掴むまでを描く日本のライトノベル原作のハリウッド映画です。主人公の記憶と経験のみが過去への時間移動を繰り返すという、「ループもの」と呼ばれるジャンルの作品である本作ですが、トム・クルーズが演じる主人公は臆病で軟弱な人物として登場し、映画が始まって程なくして呆気ない絶命を迎えるという、俳優のパブリックイメージを覆すような描かれ方がなされるが、この主人公はループする時間の中で絶命を繰り返す過程で劇的に成長し、やがて俳優が過去に演じてきたヒーローを想起させる人物となっていくのです。こうした筋書きは、観客をヒーローに感情移入させる仕掛けにもなっています。

 原作小説は2004年に日本でライトノベル、すなわち表紙や挿絵に漫画的なイラストを用いた中高生向けの娯楽小説として出版されたが、これが2009年に英訳されてアメリカ合衆国で出版された際、校正段階の試し刷りを読んだプロデューサーの目に留まり、実写映画化の企画が立ち上がったのでした。オタク向けのマイナーな文学と見られがちな日本のライトノベルがテレビドラマや実写映画の原作となることは少なくはありませんが、しかし本作のように大作のハリウッド映画として実写映画化されることは初めてであり、そうした面では異色の映画作品であり、日本のエンターテインメント小説にとっての快挙とも言える作品なのです。日本での公開時には「日本の原作、トム・クルーズ主演」というキャッチコピーが銘打たれるなど、世界的なスターでもある主演男優と日本の原作の娯楽小説という取り合わせが宣伝されています。

 原作小説は日本の千葉県南部や、東京の遥か南方に位置するという設定のコトイウシという架空の島が舞台となっていたのに対し、映画版の舞台はイギリスのロンドンを中心に、フランスの沿岸部やパリ、ドイツなどの欧州地域に置き換えられています。また、主人公をはじめとする登場人物の設定や、結末などのストーリーなども大きく変更されており、原作においてツンデレの美女の子キャラクターであったヒロインはマッチョな女性軍人に、ドジっ娘の眼鏡キャラクターであった女性整備士はオタク的な雰囲気の男性科学者へと変更されるなど、ライトノベル的な萌え要素が削られてハリウッド映画的な作風へと置き換えられています。一方で作品の根幹となるループの設定や、中盤の展開、テーマ性などは原作を踏襲しており、日本の原作らしい情緒を残したものとなっています。

ストーリー

 近未来。地球は「ギタイ」と呼ばれる宇宙からの侵略者により、滅亡の危機に晒されていました。人類側の統合防衛軍は敵の強大な戦力に対して劣勢な戦いを強いられていましたが、「ヴェルダンの女神」「戦場の牝犬」の異名で知られる英雄リタ・ヴラタスキの活躍によって反撃の糸口を掴み、機動スーツと呼ばれる歩兵用パワードスーツの投入によって、欧州地域における大規模な殲滅作戦を立案します。軍属の報道官であったウィリアム・ケイジ少佐は、殲滅作戦を指揮するブリガム将軍から戦場の現地取材という任務を命じられますが、危険な任務から逃れたい一心でそれを拒否し、報道官としての立場を乱用して将軍を脅迫しようとしたため、将軍の不興を買って地位を剥奪され歩兵として最前線に送られてしまいます。

 ウィリアムが配属されたJ分隊の兵士たちは彼に非協力的で、ウィリアムは武器の安全装置を解除する手順すらレクチャーされないまま殲滅作戦に参加させられます。統合防衛軍の目論見に反して戦況は圧倒的に劣勢で、J分隊の仲間や、英雄であるはずのリタも次々と戦絶命していく。武器が使えず逃げ惑うばかりで何の戦果も上げられなかったウィリアムも最期の勇気を振り絞り、自爆用に渡されていた地雷を使い、青白く輝く獣のような姿をしたギタイと相打ちになって絶命亡します。ところが次の瞬間、ウィリアムは意識だけが時間を遡り、出撃前日まで戻るという怪現象を体験します。既視感を覚えつつも同じ2日間を過ごし、同じように劣勢な戦場で戦絶命し、再び前の時間に戻ることが繰り返されるにつれ、ウィリアムは自分が、絶命すると同時に記憶のみが出撃前日に遡るというタイムループに巻き込まれてしまっていることに気づきます。

 理由は分からないながらもループする戦場で生き残るため、ウィリアムは敵のアタックパターンを覚えて戦い、リタを死んでしまうはずの運命から助けるが、その際にリタから、彼女もまた以前タイムループに巻き込まれた経験があり、今はその能力を失っていることを告白されています。リタによれば、時間のループはギタイ側が自らの未来を有利なものに変えるために起こしている現象であるのでしたが、ウィリアムは最初の戦いにおいて、未来から過去へと情報を伝送する役割を持った「アルファ・ギタイ」と呼ばれる個体と相打ちになりその青い体液を浴びたため、偶然にギタイからループ能力を奪って身につけたのだといいます。ウィリアムはリタとその協力者であるカーター博士から、奪取したループ能力を利用することが人類がギタイに勝利する唯一の希望となること、このことを他の人間に話せば人体実験の対象とされてしまう未来しかないこと、ギタイとの戦争に勝利するためには「オメガ・ギタイ」と呼ばれる個体を探し出して敵のループを止める必要があること、輸血を受けるとタイムループの能力は失われてしまうことなどを告げられます。

 そのための解決として、ウィリアムはループ開始時に監視を抜け出してリタとカーター博士に事情を説明するところから繰り返し、何度絶命んでも生き返れる特性を生かして過酷な訓練を受け、敵の出現位置やアタックパターンを覚えていく。そしてギタイ側がループ能力を強奪した人間を探し出す過程で見せるとされる幻覚を逆利用して、オメガの居場所がドイツにあるダムの地下であると特定し、リタと共に戦場を突破してその場所を目指そうとします。そして次第にウィリアムはリタに惹かれていくが、しかし幾度となく試行錯誤を繰り返しても、リタは途中の一点から先へと進むことができず、ウィリアムの制止を振り切って名誉の戦絶命を選んでしまいます。ウィリアムは自暴自棄になり、以降のループで戦場から逃亡するようになるが、結局どこへ逃げても人類がギタイに滅ぼされる結末からは逃れられないことを再確認します。ウィリアムは逃げることもリタと共に進むことも諦め、一人でオメガの居場所とされる場所へと辿り着くが、結局ギタイ側が見せていた幻覚はウィリアムを誘い出してループ能力を奪い返すための偽情報に過ぎず、オメガの居場所はそこではなかった。ウィリアムは罠を振り切って脱出します。

 今までの試みが徒労であったことをリタとカーター博士に告げるウィリアムでしたが、カーター博士によれば、ギタイ側が見せる幻覚に頼らずにオメガの居場所を逆探知する技術は他にもあり、しかしながらそのための機材は、ウィリアムを戦場送りにした人物でもあるブリガム将軍が取り上げてしまったといいます。ウィリアムはタイムループ能力を使って将軍の警備を掻い潜り、どのような交渉をすれば将軍を説得でき、将軍の護衛からの追撃を逃れることができるかを見極め、将軍から強奪した機材を用いて、オメガの居場所がパリのルーヴル美術館にあるガラスのピラミッドの地下であることを突き止める。しかし、それと引き替えに逃走中に大怪我を負ったウィリアムは輸血を受けてしまい、タイムループの能力を喪失してしまいます。

 二度と失敗はできないという状況の中、ウィリアムは繰り返してきたループの経験と、既に英雄として顔が知られているリタの協力により、それまでのループでは非協力的であったJ分隊を味方につけ、航空機と武装を盗用してパリへと乗り込む。ギタイ側の防衛も手厚く、J分隊の隊員たちは次々と戦絶命しリタも倒れるが、ウィリアムはループの中で繰り返してきた戦闘経験に支えられ、絶命力を尽くして戦い、オメガと相打ちとなります。しかしウィリアムは絶命の直前、再び青い体液を浴びたことからループ能力を再獲得し、ブリガム将軍と出会って地位を剥奪される直前の時間まで戻る。ウィリアムが戻った先の時間においては、未来でオメガが破壊されたことによってギタイたちは自滅し、人類はギタイに勝利していました。地位を回復したウィリアムがリタと再会する場面で映画は幕を下ろす。

キャスト

  • ウィリアム・ケイジ 演 - トム・クルーズ
  • リタ・ヴラタスキ 演 - エミリー・ブラント
  • ファレウ曹長 演 - ビル・パクストン、
  • ブリガム将軍 演 - ブレンダン・グリーソン
  • カーター博士 演 - ノア・テイラー、日本語吹替 - 隈本吉成
  • グリフ 演 - キック・ガリー
  • クンツ 演 - ドラゴミール・ムルジッチ
  • ナンス 演 - シャーロット・ライリー
  • スキナー 演 - ジョナス・アームストロング
  • フォード 演 - フランツ・ドラメー
  • キンメル 演 - トニー・ウェイ

受賞

 第42回アニー賞・アニメーション効果賞《実写映画》 - スティーブ・アヴォジャリ、五十嵐敦史、パヴェ・グロホラ、ポール・ワグナー、ヴィクトル・ルンドクビスト

 映画監督のジェームズ・ガンも2014年のお気に入りの映画12本の中で本作を挙げています。

感想

 原作の小説とはかなりストーリーが変わってしまっている作品です。正直原作の方が面白いことは間違いないのですが、ハリウッドリメイク作品の中では比較的まともに作られているきらいのある作品となっております。特に、そのキャラクター変更や、ストーリー変更、また海外向けのハッピーエンドな展開は、あれはあれで良いといえるもので、逆に、血液が抜けると力を失うという設定は若干蛇足だったかなぁと思いました。ただ、確かにあのままだと主人公無双で、ラストの葛藤もなくおわるかと思うと拍子抜けしていまいかねないので苦肉の策だったのかもしれないと、今は思っております。

驚くべき映像美! トム・クルーズ主演映画「オブリビオン」とその他トム主演映画を紹介するゼッ!!