ラストサムライ

『ラストサムライ』は、明治初頭の日本を舞台に、時代から取り残された侍達の生き様を描いた本格的な時代物作品です。

 アメリカ映画ながら、日本を舞台に日本人と武士道を偏見なく描こうとした意欲作で、多数の日本人俳優が起用されたことも話題を呼びました。その中でも「勝元」役を演じた渡辺謙は、ゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネート、またアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました《いずれも受賞には至らず》。

 戦闘場面の苛烈さや、一部に介錯場面などを含むため、アメリカ公開時はR指定(17歳以上対象)となっています。

日本での興行収入は137億円、観客動員数は1,410万人と、2004年度の日本で公開された映画の興行成績では1位となり、一方、本国のアメリカでは2003年12月1日にプレミア上映されたのち、12月5日に2908館で公開され、週末興行成績で初登場1位になりました。その後も最大で2938館で公開され、トップ10内に7週間いました。興行収入は1億ドルを突破し、2003年公開作品の中で20位。渡辺謙や小山田真、小雪、真田広之などを含め、日本の俳優が海外に進出する一つの契機を築く作品となりました。

作品解説

 主人公ネイサン・オールグレンの元ネタは、江戸幕府のフランス軍事顧問団として来日し、榎本武揚の旧幕府軍に参加して箱館戦争を戦ったジュール・ブリュネだそうです。ストーリーの元ネタとなった史実には、元政府の要人による叛乱という意味では、西郷隆盛らが明治新政府に対して蜂起した西南戦争《1877年》が該当し、近代化・西洋化に対しての反発としては、熊本の不平士族が、明治政府の近代軍隊に日本の伝統的な刀剣のみで戦いを挑んだ神風連の乱が考えられるそうです。

 シナリオを共同で執筆した監督は、『高貴なる敗北 日本史の悲劇の英雄たち』アイヴァン・モリス著の<第9章.西郷隆盛伝>に影響を受けたことを表明しており、「明治維新の実現に当初貢献しながらも、やがて新政府に反旗を翻した西郷隆盛の美しくも悲劇的な生涯が、我々の架空の物語の出発点となりました」と語っているそうです。

あらすじ

 冒頭では、古事記の一説《イザナミとイザナギの神が剣で、日本の国土を生成したと信じている人々の住む国》を引用する形で、日本の国柄を紹介しています。その長く深い伝統の空気を打ち破る幕末の近代化が始まりだとしています。建国以来の剣を信じるものと、新たな洋式鉄砲と軍隊に希望をかけるものの思いに、日本という国は分断されていったのです。

舞台は変わって、南北戦争時代のアメリカ。北軍の士官として参軍したネイサン・オールグレン大尉は、南軍やインディアンと戦っていました。その戦争の渦中では、関係の無いインディアンの部族にアタックを仕掛けたり、インディアンの子供達を撃ち続けたりしています。良心の呵責に悩まされたオールグレンは、トラウマとなった戦場での体験から逃れるように、ウイスキー浸りの生活に陥る。そんな中、日本の実業家にして大臣の大村はバグリー大佐を介し、お雇い外国人として「戦場の英雄」を軍隊の教授職として雇いに来た。その頃の日本は明治維新が成り、近代国家建設のために急速な近代的軍備の増強が必須だったのでした。大金のオファーに魅せられたオールグレンは、僚友ガントとともに日本に行き、軍隊の訓練を指揮します。やがて、不平士族の領袖である勝元が鉄道を襲ったという報が入った。まだ訓練は出来ておらず、この軍隊では闘えないと抵抗するも、やむなく出動するオールグレン。案の定、隊の練度は低く、サムライたちの勢いに呑まれた部隊はバラバラになり、ガントは落命、オールグレンは勝元らに捕えられます。しかし勝元は彼を殺さず、妹のたかに手当てをさせます。回復してきて村を歩き回り、古きよき日本の人たちの生活の風景を目の当たりにする中で、オールグレンは彼ら反乱軍=サムライたちの精神世界に魅せられるようになります。 そして勝元もまた、オールグレンにどこか不思議な魅力を感じ始めていました。勝元の息子である信忠の村での生活を深めるにつれ、オールグレンは村の人々に急速に心を開いていくが、世話をしてくれる女性、たかはオールグレンに不信感を抱き続ける。彼女の夫は、戦場でオールグレンにより殺されたからだったのでした。だが村の生活に敬意を表すようになったオールグレンに対し、次第にたかは心を開き始め、やがてたかはオールグレンを許すようになります。訓練と談笑と生活の中でオールグレンは心の中に静けさを取り戻し、サムライの村での生活に神聖なものを感じ始める。またオールグレンは、氏尾との剣合わせで、はじめて引き分けることができました。これを機に、オールグレンは氏尾や村の男たちからの信頼を急速に勝ち取る。そんな中、村の祭りが行われ、ふだんは怖く厳しい村の首領・勝元が道化を演じる舞台を見て皆が笑いあっているスキを狙って、大村が差し向けたとおぼしき間諜が密かに村に近づき、襲撃を試みる。オールグレンと勝元・村人は心を一にして間諜と戦い、ついにオールグレンは村人と味方になりました。やがて春を迎えて雪が溶け道が開いた頃、政府に呼び出されて勝元一行は東京へ出向く。疑いと警戒の目で一団の行進を見つめる大村。一行の中にオールグレンが居ることを見つけて、ほっと笑顔をもらす通訳・ピクチャー家・著述家のグレアム。東京でオールグレンが見たものは、すでに立派に訓練され、軍備も充実した政府軍の姿だったのでした。街に出たオールグレンは、銃を掲げ不遜な態度で振る舞う軍人が、信忠の剣を奪い、髷を切り落とす場面に出くわす。そんなオールグレンに、大村は刺客を差し向ける。一方の勝元は、廃刀令にしたがって刀を捨てるよう大村に迫られます。勝元は判断を明治天皇に仰ぐが、天皇は気弱さから目をそむけてしまいます。刀を捨てない勝元は、東京にて謹慎となります。オールグレンは、大村の不平士族討伐軍の指揮官就任の申し出を断り、日本での職・役割を終わらせアメリカへ帰ろうとします。が、大村の差し向けた刺客に襲われる。その後、信忠ら村の一軍やグレアムと共に謹慎先の勝元を脱出させます。勝元一行は村へ帰還できたものの、殿を務めた信忠は警備兵に撃たれ、帰らぬ人となります。もはや、政府軍と勝元達反乱軍との対決は免れぬものとなりました。意を決したオールグレンは反乱軍の一員として、政府軍に一矢報いる事を決めた。反乱軍は榴弾砲まで装備した政府軍を相手に勇敢に闘う。最後の騎馬による突撃が回転式機関銃ガトリング砲により阻止され、全員戦闘力を失う。傷ついた勝元は、信頼するオールグレンにとどめを刺すよう頼み、「すべてパーフェクトだ」という言葉を遺して、こと切れ、オールグレン一人を残し全滅しています。しかし、この闘いは決して無駄ではありませんでした。政府軍の兵士たちは勝元の絶命に様に涙し、敬意を表し跪いて頭を垂れたのです。維新以降、失われて久しかった「武士道精神」を、軍人たちが取り戻した瞬間だったのでした。生き残ったオールグレンは明治天皇に拝謁。そこで勝元の遺刀を渡す。それは日本が真に近代国家に生まれ変わるための、勝元からのメッセージだったのでした。

配役

  • ネイサン・オールグレン大尉:トム・クルーズ
  • 勝元盛次:渡辺謙
  • 信忠:小山田真
  • たか:小雪
  • 氏尾:真田広之
  • サイモン・グレアム:ティモシー・スポール
  • ゼブロン・ガント軍曹:ビリー・コノリー
  • 大村松江:原田眞人
  • 飛源:池松壮亮
  • 孫次郎:湊葵
  • 明治天皇:中村七之助
  • ベンジャミン・バグリー大佐:トニー・ゴールドウィン
  • 寡黙なサムライ《ボブ》:福本清三
  • サムライ:高良隆志
  • サムライ:充吉修介
  • 中尾:菅田俊
  • 長谷川大将:伊川東吾
  • 政府軍指揮官:二階堂智
  • ウィンチェスター宣伝員:ウィリアム・アザートン
  • スワンベック大使:スコット・ウィルソン

感想

 比較的悪評の多い作品ですが、個人的には日本の湿り気を非常によく写し取ってきている作品だなと思います。流石に少々おかしな部分も見受けられますが、全体的には非常にカッコイイ作品で、ああ、アメリカ人は日本のこんなところにかっこよさを感じているのかなと少々妄想しながら見ておりました。もしかしたら、人によっては受け付けない人もいるかもしれませんが、僕は非常に好きな作品の一つです。

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