トップガン

 実際の空中戦を描いた『トップガン』は、1986年のアメリカ映画の中でも一際人気の高い作品です。アメリカ海軍の戦闘機パイロットの青春群像を描いた航空アクション映画で、迫力のあるドッグファイトが楽しめる映画となっています。

ここが凄い!

 発表からすぐに全米興行成績1位を記録し、日本でも洋画配給収入1位を記録しています。本作の大ヒットにより、主演のトム・クルーズは一躍トップスターの仲間入りを果たしましてしまうわけですが、他にも助演のヴァル・キルマー、メグ・ライアン、ティム・ロビンスら、若手俳優の出世作としても有名な作品です。

 「トップガン」とは、アメリカ海軍戦闘機兵器学校のことで、戦闘機パイロットの上位1パーセントのエリートパイロット達の空中戦技を指導するために造られた養成機関なのです。本作の製作当時は劇中の通り、カリフォルニア州サンディエゴ近郊のミラマー海軍航空基地 (Naval Air Station Miramar) にありましたが、1996年にネバダ州のファロン海軍航空基地へ移転しています。

 製作にはアメリカ海軍が全面協力し、ミラマー海軍基地や原子力空母「エンタープライズ」内で撮影が行われました。映画の「もう一つの主役」F-14トムキャットは複座機で、俳優達も実機のコクピットに座乗して戦闘機による体験訓練飛行をしています。ただし、俳優の飛行場面はスタジオに作られた、実物のF-14のコクピットを再利用したジンバル《リング状のレールに固定された、好きな角度に回転できるセット》により撮影されています。実機の航空アクション場面はワンカット《冒頭の背面飛行場面》を除き、CGはもちろん光学合成も使わず、現用戦闘機を飛ばして撮影されており、アメリカ海軍の協力ぶりがうかがえます。

ストーリー

 ピート・ミッチェル《コールサイン:マーベリック》はアメリカ海軍の艦上戦闘機・F-14のパイロット。秘匿事項とされた父親の謎の死の影を引きずっている、野生の勘を頼りにした無鉄砲で型破りな操縦を行う一匹狼的なパイロットです。

 天才的な技量と直観力を持つ彼は自らとは全く対照的な、どこにでもいるような心優しく、陽気なレーダー要員グースを相棒として僚機のクーガー/マーリンと共に、インド洋上での国籍不明のMiG-28との実弾を交わさない空中戦を行なっていました。クーガー機に執拗に張り付いたMIG-28の頭上でマーベリックが側宙背面降下によるバックトゥバックでの、キャノピーを擦れ合わせるほどの接近を行ない、敵パイロットに向かって中指を突き立てた。更に後席のグースがポラロイドで記念撮影を行なってやり過ぎなほどの挑発行為にでましたが、MiGの乗員は呆れて、同じように側宙背面降下で離脱していきました。母艦への帰路についたマーベリックでありましたが、実際の空戦で後方に貼り付かれてロックオンされた恐怖で金縛り状態のクーガーを気遣ってボルターして、クーガーに付添って帰投させることができました。しかし、クーガーはもはや限界と自分に見極めをつけたことにより、マーベリックとグースは思いがけなくもミラマー基地のエリート航空戦訓練学校《通称:トップガン》に送られて航空戦技の神髄であるACM《空中戦闘機動》すなわちドッグファイトの戦技を磨くために教育を受けることとなります。訓練開始前に催された非公式な歓迎パーティでは、いく人かの戦闘機パイロットやレーダー要員の他に民間人専門技術《宇宙航空物理学》教官とは知らずに近づいたシャーロット《チャーリー》に一目惚れし、彼女にとっても自分の専門領域であるMiG-28の性能情報を目の前で見ているマーベリックとは、いつの日か立場を超えて恋愛関係を持つようになるのでした。

 初日の飛行実技訓練終了後には飛行教官のヴァイパーやジェスターから規則や協調性の重要性について叱責を受けつつも、日を追う毎に厳しさを増す飛行実技訓練や座学による様々な戦技理論講義・飛行実技後の検討講義・ペーパーテストを重ねて、ライバルのアイスマン達と訓練成績を競い合っていきました。ある時の編隊飛行でのアタック訓練中にマーベリック機はエンジンのコンプレッサー・ストールにより操縦不能のきりもみ状態におちいってしまい、脱出の際の不慮の事故でグースを失い、マーベリックは激しい自責の念にさいなまれる。事故調査委員会による査問でパイロットとしての責任は問われなかったが、「彼を飛ばし続けろ」と言うヴァイパーの願いも空しく、マーベリックは自信を喪失し、かつてのようなアタック性を失った弱気な戦闘機パイロットに変貌します。ワシントンDCでの就職を決めたチャーリーからは失望の意を告げられて去られてしまいます。

野獣のような激しさは影を潜め、このまま流されてトップガンはおろか海軍を辞めるか、在学中に貯め込んだ好成績点と事故後の成績不振とを相殺して生前グースが望んでいたように平凡な成績でもいいからトップガンを卒業して、その後には普通退役するか迷うマーベリックに対し、かつて彼の父親の戦友でもあったヴァイパーは、父の絶命は軍事境界線を越えた上空での交戦によるために国家機密扱いとされたものの、実は友軍機を救うために多数の敵機のアタックに晒されて、その犠牲となった英雄的行為であったという真相を知らせて励まし、復活を促しています。

 周囲の励ましもあってマーベリックはトップガンの卒業式に出るが、その謝恩会中にインド洋上での情報収集活動中の巡洋艦援護の緊急出撃命令が彼を含む幾人かに届く。レーダー要員の決まっていないマーベリックに、ヴァイパーは自分が一緒に飛んでもいいとまで言って彼を励ましています。ヴァイパー自身についても、実技飛行初日の午後にジェスターと話し合ったように、デューク・ミッチェルを失ったときに何もできなかったことを悔やんでいたことへの決着をつけるつもりだったのでした。トップガンでのマーベリックの弱気ぶりが聞こえていた空母飛行隊長は作戦ブリーフィングで彼をバックアップにまわし、先鋒に発つアイスマンの不信感を無理に押さえつける。2機対2機のつもりで飛び立った後でレーダーが捕らえた敵機機影は瞬く間に4~5機に増え、数で圧倒的に勝る敵機によってアイスマンらは苦戦を強いられ、とうとうハリウッド/ウルフマン機が撃墜されるに及んでは、マーベリックは自らに自信が持てないまま出陣を余儀なくされています。

 超音速飛行でやってきた戦闘域で、アイスマン/スライダー機1機に対する敵機5機のローリング・シザー機動による猛烈なアタックを目の当たりにしてマーベリックは愕然としていたが、後方からの1機に気を取られて、知らない間に自分らの前方から向かってきた1機がすれ違いざまに起こした乱気流によって一時的な機の制御不能状態に陥ります。マーベリックはからくも制御不能状態から回復はしたもののグースを失った恐怖の記憶が甦り、怖気付いてしまって戦闘域から逃げ出しています。空母戦闘指揮所内で無線会話をモニタリング中だった飛行隊長の罵怒声は届かないまでも、レーダー要員であるマーリンの叱咤やグースのドッグタグを握りしめ、まるで後席に彼がいるかのようにいつもの台詞の「教えてくれ。教えてくれ、グース……」と、祈るかのように呟きながらマーベリックはバトル復帰を果たし、苦戦するアイスマン/スライダー機と協調して敵機を4機撃墜、1機を撤退させることに成功。撃墜されたハリウッドらも無事に生還してアイスマンらとフライトデッキ上でわだかまりを解消させました。この一戦によってマーベリックは一匹狼からチームワークを知る優秀なパイロットへ成長したばかりでなく、グースを失った自責の念は克服され、僚友の絶命の悲しみを振り払うかのようにドッグタグを大海原に放り投げ、彼なりの弔いを行いました。世界中に報道された戦果でもあったことにより、これに気を良くした軍上層部の計らいによってマーベリックは教官としてトップガンへ戻り、さらにその知らせを聞いてDCから戻っていたチャーリーと、2人の出会いのきっかけとなった思い出の曲に包まれながら劇的な再会を果たしました。

撮影のこだわりと魅力

 劇中においてパイロットはエヴィエイターと呼称されています。これは海軍では水先案内人を意味するパイロットと区別するため航空士「エヴィエイター」と呼称するため。映画内でもチャーリーに「パイロットなの?」と聞かれ「海軍AVA《エイヴィエイ》」と答えています。

 劇中の台詞ではエヴィエイターや教官を氏名ではなくコールサインで呼んでいる。トム・クルーズ演じるピート・ミッチェルのコールサイン「マーベリック《Maverick》」は焼印の押されていない仔牛を由来とし、組織に属さない異端児を暗示しています。また、ヴァル・キルマー演じるトム・カザンスキーのコールサイン「アイスマン《Iceman》」は慌てず焦らず、相手のミスを待つクールなキャラクターを暗示しています。

 敵機として登場する「MiG-28」は架空機であり、冷戦最中の撮影当時、ソビエト連邦製の戦闘機を調達できなかったことから、MiG-21に似た特徴を持ち、実際にトップガンなどの訓練でアグレッサー部隊の仮想敵機として使われたノースロップ・F-5を使用しています。

 ドッグファイト中にF-14やMiG-28が爆破される場面では、大きさが異なる数種類の模型が使用されています。また、現実味のある背景《本物の空》にこだわり、屋外で実際に火薬を使い爆破して撮影されています。

 軍用機の中には、劇中のグースのような射出座席の射出のときにキャノピーに激突する事故が起こらないよう、AV-8Bのように脱出時にはキャノピーを火薬で爆砕する脱出方式を採用したり、F/A-18E/F(EA-18G)のように射出座席上部にキャノピーブレーカーと呼ばれる突起物を装備し、脱出時に射出座席がキャノピーに接触しても粉砕できるようにするときの対策を行っています。キャノピー自体も、座席が接触したときに粉砕しやすくするため、側面部よりも天頂部の方が薄く割れやすくなっています。また実際のF-14もキャノピーは機体後方へと吹き飛ぶように工夫されているが、劇中のようなフラット・スピンに陥った際にキャノピーが機体上空にとどまってしまう事例は実際に発生しています。

 ドッグファイトの場面は短い時間でインパクトのある映像とするため、CM撮影の監督を起用したといわれています。

 撮影は海軍の全面的な協力を受けて、実際の空母や艦載機などでの撮影が実現。これが作品の魅力の一つとなっています。

キャスト

  • マーベリック《ピート・ミッチェル》 : トム・クルーズ
  • チャーリー《シャーロット・ブラックウッド》 : ケリー・マクギリス
  • グース《ニック・ブラッドショウ》 : アンソニー・エドワーズ
  • アイスマン《トム・カザンスキー》 : ヴァル・キルマー
  • キャロル・ブラッドショウ : メグ・ライアン
  • バイパー《マイク・メットカーフ》 : トム・スケリット
  • ジェスター《リック・ヒーサリー》 : マイケル・アイアンサイド
  • クーガー : ジョン・ストックウェル
  • ウルフマン : バリー・タブ
  • スライダー《ロン・カーナー》 : リック・ロソヴィッチ
  • マーリン《サム・ウェルズ》 : ティム・ロビンス
  • スティンガー《トム・ジョーダン》 : ジェームズ・トールカン
  • チッパー : エイドリアン・パスダー
  • サンダウン : クラレンス・ギリヤード・Jr
  • ハリウッド《リック・ニーヴン》 : ウィップ・ヒューブリー

感想

 もはや感想や説明の必要ない程の名作戦闘機映画ですね。F-14トムキャットが画面狭しと駆け回り、CGが存在しない時代にも関わらず、ここまでの映像表現で魅せてくるのは本当に凄いことだと思います。実際に空中戦場面においては、ほとんど実機の空撮映像を使っていて、本当のホンモノの迫力がありますね。とにかく、戦闘機が好きな人や、風立ちぬにグッと来た人には絶対に一度は観て欲しいですね。本当にここまで戦闘機の空中戦に関して、かっこ良く疾走感あふれるフィルムに収めた作品はもうないかと思います。実際にこの映画が原因でF-14を好きになった人や戦闘機マニアになったという人はかなり多くいるらしいですが、実際に見てみると「たしかにそれはありうる」と頷いてしまいたくなります。今観ても迫力があるのだから、本作を当時リアルタイムで見たら本当に感動しただろうなと思いました。

驚くべき映像美! トム・クルーズ主演映画「オブリビオン」とその他トム主演映画を紹介するゼッ!!